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電源測定の基礎 - 電圧、電流、電力測定のポイント


1. 電源測定

電源は、電気エネルギーを1つの電圧、周波数から異なった電圧、周波数に変換するパワー・エレクトロニクス・システムです。一般的に、ACライン(100V、50/60Hz)を低電圧(12V、5V、3V)のDCに変換し、安全に絶縁し、制御する機能を備えています。

電源の設計エンジニアは、電源設計において効率を改善しつつ、さまざまな入力/負荷条件で規定の性能を維持し、安全/EMCの国際規格に適合させなければなりません。

パワーアナライザは、以下の項目を測定するツールです。

  • パワーと効率
      − 入力パワーと出力パワーの比(%)
  • 力率
      − 力率補正回路の動作確認
  • 待機電力
      − ENERGY STAR、ISC62310 Ed.2への適合性を含む
  • 負荷/ライン規制
  • EN610003-2などの電流高調波規制

電源の種類によってさまざまなアプリケーションをカバーしており、マイクロワット(コンセント差込型充電器)からメガワット級の大型インバータ・システムまであります。

このアプリケーション・ノートでは、電源と、その測定方法について説明します。

電源の設計、製造、QAでは、複雑な波形が解析でき、優れた測定確度を持ったパワーアナライザの使用が欠かせません。測定において、複雑な波形を正確に再現できないと、間違った結果を得ることになります。

  • 重要な電源測定
重要な電源測定項目
パラメータ 重要になる項目 パワーアナライザの特長
Volts RMS(電圧実効値)
Amps RMS(電流実効値)
ライン・レギュレーション、電圧降下、電源不良回路のテスト 高周波波形サンプリングによる真の実効値測定
2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
Input and Output Power(入出力電力) 消費電力 非線形の電流、電圧をサンプルし、アベレージすることで実効値電力を求める - 等価DC発熱効果
2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
VA(皮相電力)VRMS × ARMS 力率測定のためのトータル(皮相)需要 電圧と電流間の独立した位相測定
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表1a.

重要な電源測定項目
パラメータ 重要になる項目 パワーアナライザの特長
PF(力率) コンプライアンス、利用可能な電圧、電流の最適利用で必要 力率=有効電力÷皮相電力
CF(クレスト・ファクタ、波高率 大きなピーク値による電流波形の解析 大きなクレスト・ファクタでも測定できるため、一般的なスイッチング波形が解析できる
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THD(全高調波歪み) 非直線性の影響の解析に必要 パワーのDSP解析可能により、正確なTHD測定が可能
Standby Power(待機電力) ENERGY STAR、IEC62301で必要 米国における2000年の調査では、家庭の消費電力の約10%は待機電力である(60億ドル)。IEC62301のテスト・レポート例
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表1b.

2. 電圧、電流、電力測定のポイント

ACラインに接続された電源からは、一般的に歪んだ非直線性の電流が流れます。多くのAC(交流)電圧計/電流計は波形の平均値に応答します。実効値で校正されていますが、純粋な正弦波の場合にのみ正確に測定できます。

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図1. 実効値電圧と実効値電流の波形

テクトロニクスのパワーアナライザは、電圧、電流波形の数多くのサイクルから膨大な数の瞬時電圧、電流サンプルを取込んで実効値を得ます。大きく歪んだ波形であっても、真の実効値が得られます。当社のパワーアナライザは、すべての周波数、波形形状で正確なパワー測定が行えるよう、ACとDC結合になっています。

電流と電圧の位相/振幅サンプルは、電源の特性評価で必要となる、数多くのパラメータを求めるアルゴリズムの基礎的な構成要素です。入力と出力の電力を測定することで、電源効率の詳細がわかります。確度の高い効率測定には、正確な入出力の電力測定が必要です。一般に、電源は通常の動作電力と待機電力(電源は常時供給されているものの、オフになっている状態)で特性を評価されます。流れる電流は非線形であるため、真の実効値電流/電圧の測定が必要になります。一般的なスイッチング電源の電流、電圧波形を、図1に示します。

実効値電力、力率、高調波など、図1に示すようなすべての基礎設計パラメータを正確に測定するためには、高周波サンプリング機能を持ったパワーアナライザが欠かせません。

当社のパワーアナライザは、ピーク・レンジ計測器であり、ユーザの介入なしに、またはエラーが加わることなく、最大10のクレスト・ファクタの波形を自動的に測定することができます。

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図2. RMS(Root Mean Square、実効値)波形

2.1. RMS(Root Mean Squared Value、実効値)

実効値は、ACの電圧と電流両方の値を規定する、最も一般的で便利な値です。AC波形の実効値はその波形から得られるパワー・レベルを示すものであり、同じ電圧のDCと等価です。これは、ACソースで最も重要な属性の一つです。実効値の計算は、ACの電流波形と、それによって生ずる発熱効果によってうまく説明できます(図2を参照)。

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抵抗に電流が流れると、任意の時間における発熱効果は次のように計算できます。

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上記で示した平均発熱効果を発生させる電流と等価の値を求めると次のようになり、

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したがって、

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS

電流の実効値は、電流の二乗平均平方根で求められます。この値は、抵抗負荷に発熱効果(電力)を発生させるDC電流と等価であるため、AC波形の実効値と呼ばれることがあります。これは、正弦波には当てはまります。

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2.2 平均値

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図3. 平均の求め方

図3に示すような波形の平均値は、次のように求められます。

                平均値 = 半サイクルで囲まれた面積 ÷ 半サイクルのベースの長さ

平均値は波形の半サイクルに対して意味を持つため、対称性のある波形の完全な1サイクルにおける平均値はゼロになります。シンプルなマルチメータでは、AC波形を全波整流した波形の平均値を計算します。しかし、このようなマルチメータは実効値で校正されており、正弦波の実効値と平均値の以下のような関係性(波形率)を利用しています。

                実効値 = 1.11 × 平均値

しかし、純粋な正弦波以外では、このようなマルチメータの読み値は有効ではありません。実効値は、図3のような方法で計算する必要があります。

2.3 有効(実効)電力(W)と皮相電力(VA)

100Vrmsの正弦波電圧が100Ωの抵抗負荷に接続されると、電圧と電流は図4のように表され、「同相」であると言います。電源から負荷に流れる、任意の時点における電力はその時点における電圧と電流の積となり、図4のようになります。

この結果、負荷に流れる電力は0~200Wで変動し(電源の2倍の周波数)、平均電力は100Wとなります。これが100Ωの抵抗における100Vrmsで得られる値になります。しかし、負荷が100Ωのインピーダンスとリアクタンス性(例えば、抵抗と同様にインダクタンス、キャパシタンスの負荷)を持っている場合、電流は1Armsですが電圧と同相にはなりません。誘導性負荷の場合の例を図5に示します。電流は60°遅れています。電力は電源の2倍の周波数で変動していますが、電源から負荷へ流れる電力は半サイクルの一部しか負荷に流れていません。残りの部分は負荷から電源に向って流れています。したがって、負荷に流れる平均値は抵抗負荷のみの場合と比べると小さくなり、図5に示すように利用可能な電力のうち、50Wのみが誘導性を含む負荷に供給されます。上記の2つの例における実効値電圧は100Vrmsであり、実効値電流は1Armsとなります。この2つの値の積は負荷に供給される皮相電力であり、次のようにVAで表わされます。

                皮相電力 = Vrms × Arms

供給される有効電力は、負荷によって異なります。実効値電圧の知識があっても有効電力は求められず、真のACパワー・メータを使用し、瞬時電圧と瞬時電流の積が計算でき、その結果の平均値が表示できる機能が必要になります。VA測定は、AC電源に十分な容量があることを確認するために行われます。

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図4. 電圧と電流の位相波形
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図5. 電源から負荷に流れる電力
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図6. 力率波形

2.4 力率

DCシステムとは違い、伝送されるAC電力は電圧と電流の値を掛け合わせて求められるほど簡単ではありません。さらに、力率という要素も考慮しなければなりません。先に説明した誘導負荷を含む例(有効電力と皮相電力)では、利用可能な電力は皮相電力のちょうど半分でしたので、力率は0.5になります。したがって、力率は次のように求められます。

                力率 = 有効電力 ÷ 皮相電力

正弦波の電圧および電流波形の場合、力率は電圧と電流波形の位相角(θ)のコサインになります。例えば、先に説明した例の誘導負荷では、電流は電圧から60°遅れます

したがって、

                力率 = cosθ = cos60°= 0.5

力率がcosθと表現される理由がここにあります。しかし、これは電圧と電流が正弦波(図6のI1、I2)の場合にのみ当てはまることであり、その他の場合(I3)では力率はcosθにはなりません。cosθの値を表示する力率計を使用する場合、電圧、電流が純粋な正弦波でない場合は、cosθの読み値は正しくないことを思い出す必要があります。真の力率計は、上記で説明したように、電力の有効成分と皮相成分の比を計算します。

当社のパワーアナライザは、非常に小さな力率であっても正確に測定することができます。これは、製品の特性評価、開発にとって非常に重要になります。

2.5 クレスト・ファクタ

当社のパワーアナライザは、最大10のクレスト・ファクタが測定できます。これは、常に大きなピーク電流が流れるスイッチング電源の特性評価に最適です。先に説明したように、正弦波では以下の式が成り立ちます。

                ピーク値 = 実効値 × √2

ピーク値と実効値の関係はクレスト・ファクタで表わされ、次式で示されます。

                クレスト・ファクタ = ピーク値 / 実効値

したがって、正弦波では次のようになります。

                クレスト・ファクタ = √2 = 1.41

AC電源に接続される最近の機器には、非正弦波の電流が流れるものが数多くあります。このような製品には、電源、ランプの調光器、蛍光灯などがあります。電源が供給する電流のクレスト・ファクタは4近くあり、大きいものでは10にもなります。

2.6 高調波歪み

負荷によって電流波形に歪みが生ずる場合、クレスト・ファクタに加え、波形形状の歪みレベルを定量化することも重要です。通常のオシロスコープで歪みは観測できますが、歪みのレベルまでは測定できません。フーリエ解析によると、非正弦波の電流波形は、電源周波数の基本波成分と、電源周波数の整数倍の周波数成分を持った一連の高調波で構成されます。例えば、スイッチング電源、調光器、速度制御している洗濯機のモータなどでは、図7に示すような、非常に大きな高調波が含まれていることがあります。

有効な電力が生成できるのは、電流の基本波成分のみです。その他の高調波成分は電源内部を流れるだけでなく、配線ケーブル、変圧器、電源に関連したスイッチング素子にも流れるため、これらすべてで更なる損失が発生します。機器が発生させる高調波のレベルを制限する必要性が認識され始めています。負荷の種類に応じて順守すべき高調波電流の許容レベルが国/地域ごとに規定されています。このような規制は広まっており、EN61000-3-2などの国際的な規格もあります。したがって、機器の設計エンジニアも設計した製品が高調波を発生させていないか、また、どの程度の高調波が発生しているかを認識する必要があります。電力を発生させるのは基本波だけであり、高調波では発生しません。

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図7. 高調波バーグラフの例

2.7 待機電力

待機電力は、負荷のすべてが機能していない状態で電源から供給される電力です。電子レンジの時計のみを動作させる電力、ノート・コンピュータのバッテリがフル充電されている状態で消費される電力などが該当します。

待機電力の測定では、単に小さな測定レンジがあればよいだけでなく、バースト・モードで動作する電源の問題に対処できる特殊な技術が必要になります。

当社のパワーアナライザには、ワンボタン操作によるスタンバイ・モ ー ド が 装 備 さ れ て い ま す。 ま た、 標 準 で 付 属 さ れ て い るPWRVIEWソ フ ト ウ ェ ア と 併 用 す る こ と に よ り、ENERGYSTARおよびIEC62310 Ed.2の待機電力測定のコンプライアンス・テストに対応できます。詳細については、当社のアプリケーション・ノートをご覧ください。

3. 電源の種類

電源には、大きく分けてリニアまたはスイッチングという2種類に分類されます。一般に、スイッチング電源はコンピュータやコンセント差込型充電器など、高周波アプリケーションで使用されます。軽量、小型であり、安価が特長です。リニア電源は、主に出力(場合によっては入力も)が非常にクリーン(小さなEMI/EMC)で低ノイズが求められる用途で使用されます。しかし、効率が悪く、大型になります。

インバータ - 非常に小さなスケールから大型のものまであり、太陽電池セルからDC成分を取り出し、グリッド接続のために単相または複相のACに変換します。

LEDドライバ - LEDランプ・システムの電源(ドライバ)には、ローコスト、高効率の駆動回路のための数多くのトポロジがあります。ACまたはPWM(パルス幅変調)制御による整流されたDCが出力されて輝度を調整します。

4. まとめ

電源のパワー、およびパワー関連の測定を行う場合、電源の性能仕様を正しく把握するため、高性能で正確な計測器が必要になります。

テクトロニクスのPA1000型は、広い測定レンジに加え、ピーク・レンジ、デュアル・シャント、波形表示機能があり、最新の電源の迅速な開発、テストに最適なパワーアナライザです。

5. 参考資料

  • Making Ballast Measurement with PA1000(PA1000型によるバラスト測定、英文)、www.tek.com
  • Making Standby Low Power Measurement with PA1000(PA1000型による待機電力の測定)、www.tek.com
  • PA1000型ユーザ・マニュアル、www.tek.com
  • Power Analyzer Accessory Brochure(パワーアナライザのアクセサリ・カタログ、英文)、www.tek.com