自動車のトレンド

コネクテッド・カー

現在の自動車は、エレクトロニクスの急速な進歩により、単なる機械装置から車輪の付いたミニデータセンタへと急速な変化を遂げています。

130年後には、コンピューティング・パワーが馬力に取って代わる

この記事では、テクトロニクスのChris MartinezとJoern Hoepfnerが自動車革命を推進するトレンドについて説明します。

過去130年の歴史において、自動車産業が、現在展開されているような革命を経験したことは一度もありません。電化、自動化、拡張性、モバイル化の影響を受け、メーカはこれまで疑問の余地のなかったプラクティスと技術を再評価する必要に迫られています。実際、自動車の基盤は、エレクトロニクスの急速な進歩により、単なる機械装置から車輪の付いたミニデータセンタへと変化しています。

しかし、モータ・カーは、大勢の人が考えるよりもずっと前から電子制御システムに依存してきました。例えば、1958年には、最初の電子燃料噴射システムであるクライスラ社のエレクトロジェクタが合計35台の車両に搭載されました。興味深いことに、こうした初期の開発製品の大半は、主に初期の電子システムが「臨機応変」に燃料を計測するという要求を満たせないという理由で、製造現場で4気筒のキャブレターに仕様変更されました。

現在、高機能の電子エンジン管理システムにより、燃料噴射と点火を制御するだけでなく、運転サイクルをオット、ミラー、アトキンソン間で変更することさえできるようになりました。さらに、メーカは近年、予混合圧縮着火エンジンの高精度な制御を商品化することにも成功しています。

 

 

ADASは車両運転ネットワーク要件です

しかし、業界では、電子システムの新たな課題に直面しています。一つには、電化の安定したロールアウトと、完全運転自動化を示すレベル5に向けて急速に移行している高度運転支援システム(ADAS)が関係しています。

レベル5の自動化という語は、次の6つのレベルの自動化について記載したSAE J3016規格によって定義されています。

Battery-lifeイメージ・ソース:ITS国際
レベル0:人間が、ステアリング、ブレーキ、スロットルを含め、車両を完全にコントロールします。基本的に、車両の運転はこれまでずっとこのように行われてきました。
レベル1:制動のような運転の小さな要素については、車両が自動的に実行できます。
レベル2:少なくとも2つの機能(レーン・センタリングやクルーズ・コントロールなど)が自動化されています。この段階では、ドライバはステアリング・ホイールから手を離し、ペダルから足を離すことができますが、いつでも制御できるようにしておく必要があります。
レベル3:このレベルでもドライバは引き続き運転席にいますが、レベル2ほど周囲の環境をモニタする必要はありません。
レベル4:米国運輸省(DOT)によると、このレベルの車両は、「安全上重要なすべての運転機能を果たし、全旅程で道路状況をモニタする」ように設計されています。この運行は、特定の地域(地形)や、渋滞や高速道路巡航などの特殊な状況に限定されています。これらの地域または状況以外では、ドライバが制御を再開しない場合、車両は駐車するなどして、安全に旅程を中止できなければなりません。
レベル5:この段階では、車両は完全に自動走行し、人間がステアリング・ホイールを操作したり、一般的な制御を実行する必要はありません。
テクトロニクスのアプリケーション・エンジニアリング・マネージャ、Joann Hoepfnerは、2018 Audi A8などの車両に言及し、「レベル3のシステムはすでに製品化されており、レベル4の車両については、世界中の公道におけるテスト走行距離が急速に増加しています」 と述べています。

自動車の未来はデータ転送に依存する

国際的なテスト、検査、監査、認証サービスのプロバイダであるTÜV SÜDの最高技術責任者であるDirk Schlesinger氏は、「これからの車は車輪の付いたコンピュータになるかもしれないが、これまでもよりもさらに課題が増えるでしょう」と語っています。

一例として、Ford GTの場合、実行されるコードは1億行にのぼります。Windows 10と比較した場合、実行可能コードは2,700万から5,000万行であり、マザーボード、グラフィック・カード、Officeなどのアプリケーションが含まれている場合、その数は1億行まで増加します。

しかし、電子システムの見直しを余儀なくされているのはコンピューティング・パワーだけではありません。自動化車両には、1日あたり約4,000GB(4TB)のデータを生成する15個のセンサ・セットに50種類のセンサが装備されることになります。

  • カメラは20~60Mbpsのデータを生成
  • レーダには10kbpsが必要
  • ソナーには10~100kbpsが必要
  • GPSは50kbpsで実行
  • LIDARは10~70Mbpsの範囲内で設定

そして、これらのデータはすべて、1986年以来コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)となってきたネットワークを介して伝達する必要があります。もともと、CANバスは、最大8バイトのデータ・パケット・ペイロードおよび約1Mbpsの最大バス速度で、車両内のECU間で制御トラフィックを送信するように設計されていました。

データの大幅な増加に対応するために、CANにプロトコルの変更を加えたCAN FD(可変データ・レート)が開発され、最大ビット・レートは15Mbpsまで増加し、ペイロードは約64バイトに改良されました。

これらのレートでは、CANは、LIDARやカメラなどのイメージング・システムに対応できません。さらに、制御装置は、サブシステム間での調整を行うために、ECU間でより多くのデータを転送する必要があります。このため、車載用ネットワークの設計者は、速度だけでなくアーキテクチャも再評価する必要があります。

これらのデータ集中型システムをサポートするため、業界では次のようないくつかの代替手段が開発されています。

  • 最初に、ドイツのカールスルーエに本拠を置くMOST(Media Oriented Systems Transport)のコンソーシアムは、マルチメディアをターゲットにして、150Mbpsを伝送できるMOST150を作成しました。この追加帯域幅により、MOST150は、車線逸脱警報、カメラ・システム、アダプティブ・クルーズ・コントロールなどの運転支援技術にも適しています。
  • 車載アプリケーション用に明示的に開発されたわけではありませんが、Low Voltage Differential Signaling(LVDS)という別のシステムも存在します。これは、ツイスト・ペアの銅線を使用し、最大655Mbpsの帯域幅を持つ高速信号規格を提供します。この高速性のおかげで、LVDSは車載用カメラ・メーカにとって魅力的な選択肢になります。
  • 最近、メーカは、高性能帯域幅を提供できる自動車ソリューションとして、低コストでシールドされていない1つの「ツイスト・ペア・ケーブル」に結合されたイーサネットを採用しました。この技術は、自動車業界の厳しい車載要件を満たすために特別に設計されており、複数の車載アプリケーション用に最適化されています。車載適合技術により、100Mbpsの高性能帯域幅が実現されます。

ほとんどの自動車設計には、これらのバス規格のうちの2つ以上が含まれています。FlexRayは、タイトなレイテンシと時間特性を備えており、デターミニスティック性能が重要な「ドライブバイワイヤ」アプリケーションに最適です。SENTはセンサとの通信に使用できます。実績のある信頼性のほうがスピードの必要性よりも重視されるアプリケーションでは、CANおよびLINが引き続き役立つと期待できます。多くのECUはコントローラとしてだけでなく、ネットワーク・ゲートウェイとしても機能します。

高度に自動化されたコネクテッド・カーは、複数のタイプのネットワーク・アーキテクチャに依存するため、設計エンジニアは複数のネットワーク技術を同時にテストしてトラブルシューティングを行うという課題に直面しています。これらの技術の多くは、ITデータ・センタでは、アット・ホームな環境に置かれているように見えますが、車内では、広範な温度範囲や湿度範囲内で完全に機能し、衝撃や振動に耐え、他のモジュールや一般的な環境とのEMCを維持する必要があります。

伝導RF、放射RF、および意図的RF

非常に多くの組込みデバイスが導入され、自動車全体で重要な情報を伝達する必要性が増すにつれ、それらの設計をデバッグおよび検証するためのテスト・プロセスがますます複雑になってきています。また、データ・レートが増加するにつれて、システムを危険にさらす可能性のある「不具合」が増加するおそれもあります。自動車業界では、大規模なスパーク発生点火システムを使用しているため、EMC(電磁適合性)の問題についてはよく知られています。
テクトロニクスの戦略プランナ、Chris Martinezは、「データは現時点で爆発的なものになりつつあります」と述べています。「さらに、V2VやV2Iがあります。交差点に近づいているところを想像してください。車両には、交差点や別の車両とさえ話す能力が備わっているのです。」とMartinezは続けています。
エレクトロニクスのせん断量、および車両を流れるデータの重要な性質により、EMCはより困難で、より重要なものになっています。さらに、メーカはすでに、GSM、3G、4G、Wi-Fi、およびBluetoothを搭載しており、非常に短い応答時間を必要とするセーフティ・クリティカルなアプリケーションに新しい放送技術を組み込む計画を立てています。
Martinez氏は、「RFは大きな問題です。何かが干渉を起こした場合、その結果をどのように緩和したらよいのでしょうか?何かが動作を停止してしまうと、致命的な障害が発生してしまわないでしょうか?」と述べています。Martinez氏は、結果的に、この分野では巨大なテストの必要があると考えており、「これは単なるエレクトロニクスのテストではなく、時には車両を室内に入れてテストすることも必要になるでしょう」と締めくくっています。

モビリティの共有により、新しい標準とテストが必要になっている

急速に進化する業界が直面しているもう一つの課題は、モビリティに関するものです。現在では、カーシェアリングと配車サービスが消費者の移動手段の選択においてますます重要な役割を果たしています。このモデルでは、Uber、Lyft、中国のDidi、および東南アジアのNuTonomyなどの企業が、L4、さらにはL5の自動運転の「タクシー」サービスをコミュータに提供しています。

このモビリティへの移行により、OEMが新たなオンデマンド・サービス・プロバイダにとってのハードウェア・サプライヤになるための機会が開かれています。例えば、Volvo社は、24,000台のXC90を供給するという契約をUber社と結んだ最初のメーカになりましたが、これらの車両には、配車会社が独自の自動運転機能を開発するために必要なコアとなる自律運転技術が備わっています。
自動化された標準プラットフォームとして、Volvo社は、自社の要件を満たすように汎用システムをカスタマイズしたいと考えている他の配車会社にも、これらの車両を供給する可能性があると考えています。この広範なカスタマイズには、ハードウェア/ソフトウェア/通信ネットワークに必ずしも互換性があるわけではないというリスクがあります。このため、最終的には、車両のインテグリティを保証するための新しい規格およびテストの策定が必要になります。
また、オンデマンド共有型の通勤、接続、および自動化によって輸送手段は変化するため、電源管理は多数の車載システムをサポートする上でさらに重要な役割を果たします。これらの車両には、現在発売されている48/ 12Vマイルド・ハイブリッドEVや、ハイブリッドに見られる高電圧/12Vシステムなどの二重電圧システムを採用することができます。

電気エネルギ管理によってスマート・カーを強化

当然のことですが、トラクション・システムの電化については多くのことが言われています。しかし、電源配信システムについては評価されないことがよくあります。このシナリオでは、照明、点火、エンターテインメント、オーディオ・システム、および電子モジュールなどの従来の負荷を12Vネットワークで処理しつつ、アクティブ・シャーシ・システム、空調コンプレッサ、回生制動およびトルク・アシストを高電圧システムでサポートします。

また、メーカが性能を向上させ、コストを削減し、パワー・エレクトロニクスのパッケージングを最適化する方法を模索するにつれて、窒化ガリウム(GaN)および炭化ケイ素(SiC)電力半導体の開発によって新たな扉が開かれました。例えば、DC/DCコンバータでは、これらの広範なバンドギャップ技術によってスイッチング速度が高速になり、インダクタ、トランス、コンデンサのサイズが小さくなり、一般的に質量とサイズが小さくなります。メーカはこれらすべてを達成しつつ、90年代前半の変換効率も実現しました。

これらのシステムは、従来の自動車メーカよりもコンピュータ技術業界との協調性に優れており、安全性と機能性の性能を確保するための新しい規格とテスト手順が今後徐々に公開される予定です。

このため、おそらく2030年の自動車広告では馬力よりも、Xeon、Snapdragon、Drive PXといったプロセッサのコンピューティング・パワーについて注目されることになるでしょうが、まだ行わなければならない必要な準備作業が数多くあります。技術の開発と改良だけでなく、規格を定義し、システムを完全にテストする必要もあります。

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