Current Language
×
Japanese (Japan)

言語の選択:

トグル・メニュー
Current Language
×
Japanese (Japan)

言語の選択:

ダウンロード

マニュアル、データシート、ソフトウェアなどのダウンロード:

ダウンロード・タイプ
型名またはキーワード

フィードバック

三相測定の基礎


はじめに

単相電力は家庭や事務所の電気製品への電力供給で一般的に使用されていますが、三相交流(AC)システムは送電網や大電力の装置への直接給電において広く使用されています。

このテクニカル・ノートでは、三相システムの基本原理と、選択可能な異なる接続による測定の差異について説明します。

三相システム

三相の電気は、全く同じ周波数でほぼ同じ振幅を持った、3 つの AC 電圧からなります。各 AC 電圧の位相は、互いに 120°ずれています。この様子は、次の波形、ベクトル図で図式化できます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 1.三相の電圧波形
2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 2. 三相の電圧ベクトル

三相システムは、次の 2 つの理由により使用されています。

  1. 3 方向に配置された電圧ベクトルは、モータ内の回転磁界の生成に使用できます。これにより、モータは追加の巻線の必要なしに始動することができます。
  2. 三相システムでは、必要とされる負荷への接続銅線数が三相システムでない場合の半分で接続できます。伝送損失も半分になります。

3 つの単相システムが、それぞれの負荷に 100W を供給する例を考えます。トータルの負荷は 3×100W=300W になります。電力供給では 6 線に 1A 流れるため、6 ユニットの損失になります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 3. 3 つの単相電源 - 6 ユニットの損失

この 3 つの電源は、1 つの共通のリターンに接続できます。各相の負荷電流が同じ場合、負荷は平衡(バランス)がとれているといいます。負荷がバランスし、3 つの電流の位相が互いに 120°ずれている場合、どの瞬間においてもリターン電流の合計はゼロであり、リターン・ラインに電流は流れません。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 4. バランス負荷の三相電源 - 3 ユニットの損失

単相では 6 線が必要な電力の伝送が、三相の 120°システムでは、3 線のみで伝送できます。必要な銅線の量は半分であり、伝送線による伝送損失も半分で済みます。

Y 結線またはスター結線

共通の接続点を持った三相システムの接続方法は下図に示すとおりであり、Y 結線またはスター結線(星形結線)と呼びます。共通のポイントは Y、スター、または中性点と呼びます。通常、このポイントは安全のためにグランドに接続されます。実際には、負荷は完全にはバランスされないため、4 番目の中性線に合成電流が流れます。中性線は、3 本のメイン導線に比べて比較的細い線が使用されます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 5. Y 結線またはスター結線 – 三相、4 線

Δ(デルタ)結線

先に説明した 3 つの単相電源を直列に接続した場合を考えます。120°シフトした 3 つの電圧の合計は、どの時点においてもゼロです。合計がゼロであれば、両エンド・ポイントは同じ電位であり、結合できます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 6. 瞬時電圧の合計はゼロ

結線は下図のようになり、結線の形状がギリシャ語のΔに似ているため、Δ結線(デルタ結線)と呼びます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 7.Δ結線 - 三相、3 線

Y 結線とΔ結線の比較

Y 結線は、家庭や事務所などの単相家電製品への電源供給で使用されます。単相の負荷は、Y の一端と中性点に接続します。元の三相電源に対してバランスがとれるように、各相のトータルの負荷は可能な限りバランスされるように共有されます。Y 結線は、より高電圧で高電力負荷への単相電力または三相電力を供給することもできます。

通常の単相電圧は、1 つの位相-中性点間の電圧(相電圧)です。より高電圧の単相は位相間電圧(線間電圧)で得られ、ベクトル図に示す黒のベクトルになります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 8. V(線間電圧)=√3×V(相電圧)

Δ結線は、ハイパワーの三相工業用負荷への電源供給で使用されます。

しかし、電源のトランスの巻線からタップをとることで、1 つの三相Δ結線からさまざまな電圧の組み合せが得られます。アメリカの例では、240V のΔシステムで巻線のセンター・タップをとることで、2 つの 120V 電源がとれます。安全のため、センター・タップはグランドに接続されます。センター・タップとΔ結線の 3 番目の相をとることで、208V も得られます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 9.

電力測定

交流の電力は、電力計(パワーメータ)を使用して測定します。テクトロニクスの PA4000 型など、最新のデジタル・サンプリング・パワーメータは、電圧と電流の瞬時サンプル値を掛け算して瞬時電力を計算し、1 サイクルの瞬時電力の平均をとって真の電力を表示します。パワーメータ/パワー・アナライザは、さまざまな波形形状、周波数、力率における有効電力、皮相電力、無効電力、力率、高調波などを正確に測定します。

単相のパワーメータ/パワー・アナライザ接続

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 10. 単相、2 線、DC 測定

必要なのは 1 台のパワーメータのみです。被測定システムとパワーメータの電圧/電流端子を直接接続します。パワーメータの電圧端子は負荷と並列に接続し、電流端子は負荷と直列に接続します。

三相 3 線接続 -2 チャンネルのパワーメータ/パワー・アナライザを使用する方法

3 線の場合は、2 チャンネルのパワーメータを使用して全電力を測定します。パワーメータは、下図のように接続します。パワーメータの電圧端子は位相間に接続します。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 11. 三相、3 線(2 チャンネルのパワーメータを使用する方法)

必要なパワーメータの台数(チャンネル数)

単相システムでは 2 線があるだけです。電力は、1 台(1 チャンネル)のパワーメータで測定します。3 線システムでは、下図のように 2 チャンネル(2 台)のパワーメータが必要になります。一般的に、必要なチャンネル数(台数)は次のように計算できます。

必要なパワーメータのチャンネル数=線数-1

3 線 Y システムを 2 チャンネルで測定する原理

パワーメータで測定される瞬時電力は、瞬時電圧サンプルと瞬時電流サンプルの積です。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 12.

3 線の場合は、2 チャンネルのパワーメータを使用して全電力を測定します。パワーメータは、下図のように接続します。パワーメータの電圧端子は位相間に接続します。

パワーメータ 1 の読み=i1(V1-V3

パワーメータ 2 の読み=i2(V2-V3

W1+W2 の読みの合計=i1V1-i1V3+i2V2-i2V3=i1V1+i2V2-(i1+i2)V3

(キルヒホッフの法則により、i1+i2+i3=0、したがってi1+i2=-i3

W1 と W2 の読みの合計=i1V1+i2V2+i3V3=瞬時電力の合計

単相 3 線接続

このシステムでは、電圧はトランス巻線の 1 つのタップから取り出されており、すべての電圧は同期しています。2 つの 120Vと 1 つの 240V の電源がとれ、それぞれ異なった負荷に接続されます。トータルの電力、その他を測定するには、下図のように2 チャンネル(2 台)のパワーメータを接続します。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 13. 単相、3 線

三相 3 線接続

3 チャンネル(3 台)のパワーメータ/パワー・アナライザを使用する方法

先に説明したように、3 線システムのトータル電力は 2 台(2 チャンネル)のパワーメータがあれば測定できますが、3 台使用すれば便利な場合があります。以下の図には、3 台のパワーメータの低電圧端子を接続して見せ掛けの中性点を作っています。

3 線、3 チャンネル・のパワーメータ接続による利点は、各相の電力測定(2 チャンネルのパワーメータ使用では測定できません)と相電圧(中性点から各相の電圧)を測定できることです。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 14. 三相、3 線(3 チャンネルのパワーメータ使用 - アナライザは三相、4 線モードに設定)

三相、4 線接続

4 線システムのトータル電力測定には、3 チャンネル(3 台)のパワーメータ/パワー・アナライザが必要です。測定する電圧は、真の相電圧(各相と中性点間の電圧)です。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図 15. 三相、4 線(3 チャンネルのパワーメータ使用)

線間電圧は、ベクトル演算を使用すると、相電圧の振幅と位相から正確に計算できます。最新のパワー・アナライザは、キルヒホッフの法則を使用して中性線の電流も算出します。

計測器の選択

  1. 線数が N の場合、電力などのトータル量を測定するには(N-1)チャンネルのパワーメータ/パワー・アナライザが必要になります。
  2. 最新のマルチチャンネル・パワー・アナライザは、内蔵された最適な計算式を使用して有効電力、電圧、電流、皮相電力/無効電力、力率などの様々なパラメータを計算します。ベクトル演算機能を搭載したパワー・アナライザは、相電圧、相電流(中性点(または Y)と各相の電圧、電流)から相間電圧、相間電流に変換します。係数√3 は、バランスのとれた線形システムにおいてシステム間の変換、あるいは 1 チャンネル(1 台)のみの測定値からトータル値を算出する場合にのみ使用できます。
  3. 多くの電気/電子負荷は非線形であり、電源からは歪んだ電流が流れます。高調波解析機能があれば、高調波電流、電力が調べられます。
  4. パワー・エレクトロニクスで正確なパワー解析を行うためには、広帯域で優れた CMRR(同相信号除去比)を持った測定器が必要になります。