Current Language
×
Japanese (Japan)

言語の選択:

トグル・メニュー
Current Language
×
Japanese (Japan)

言語の選択:

ダウンロード

マニュアル、データシート、ソフトウェアなどのダウンロード:

ダウンロード・タイプ
型名またはキーワード

フィードバック

USBスペクトラム・アナライザを使用した ケーブルとアンテナの測定


このアプリケーション・ノートでは、スペクトラム・アナライザとトラッキング・ジェネレータを使用した、ケーブルとアンテナ・システムのライン・スイープ測定の基礎を説明します。また、ライン・スイープ測定の重要性と測定方法についても説明します。測定項目としては、リターン・ロス/VSWR(電圧定在波比)、ケーブル損失、アンテナ・アイソレーション、DTF(障害位置検出)測定があります。

スペクトラム・アナライザによる伝送損失、伝送利得、リターン・ロスの測定では、トラッキング・ジェネレータが重要になります。後で説明しますが、トラッキング・ジェネレータはスペクトラム・アナライザのスイープ周波数にトラックする、シンプルな周波数スイープするRFジェネレータです。言い換えれば、トラッキング・ジェネレータはアナライザのスイープに応じて信号を出力し、周波数レンジにおけるパワーを測定します。これは、ユーザが既知の信号を回路に入力し、その応答を観測することを意味します。

トラッキング・ジェネレータが利用可能なポータブル・タイプのスペクトラム・アナライザは市場に数多くあります。しかし、このような計測器の多くはスピードが遅く、十分なプロセッサ・パワーがないため、リアルタイム性能がありません。一方、ノートPCまたはタブレットPCと組み合わせて使用するテクトロニクスのUSBスペクトラム・アナライザは、デスクトップ・レベルのリアルタイム性能を、バッテリ駆動およびIP52準拠の防塵・防滴仕様のポータブルなパッケージで実現しています。

ケーブルとアンテナのテスト - 問題の原因

携帯基地局の不具合の60%は、ケーブル、コネクタ、アンテナの不良によるものと推定されます。インストール時に問題が発生し、ただちに現象が現れるものもあります。しかし、接続されたケーブル、アダプタ、アンテナは時間とともに故障したり、徐々に性能が低下したりすることがあります。コンポーネントの不良は、セルラ・システムでは不十分なカバレッジや不必要なハンドオーバなどとなって現れます。携帯ネットワークは最もわかりやすく一般的な例ですが、あらゆる無線通信システムでは、継続的な性能検証のテストを行わないと、原因不明の性能低下を起こすことがあります。

ケーブルとアンテナは、屋外と屋内のいずれにおいてもさまざまな環境に耐えるように期待されていますが、それぞれに問題があります。

一般的な屋外設置では、アンテナは高いビルまたはタワーの最上部、場合によっては遠隔地に設置されることがあり、このような場所では、アンテナや同軸ケーブルの一部は大きな温度変化、雨、雪、氷、風日光など、厳しい気候条件に晒されます。このような条件はシステムの相互運用性に影響することがあり、コネクタ接続部の防水不良、ケーブル接続部のシール不良、絶縁材料のひび割れなどの物理的損傷となって現れます。

屋内設置では、機器シェルタやオフィス・ビルなどの固定したセット アップに加え、船、飛行機、列車、車、トラックなどの移動アプリケー ションがあります。移動アプリケーションでは、損傷の可能性がより 高くなります。保護された設置であっても、取扱いの不手際、ストレ ス、熱、振動、化学物質、汚染物など、さまざまな危険に晒されます。 問題は、はんだ接合部の接触不良、時間経過によるケーブル被覆の 劣化、破損、または性能低下などとなって現れます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図1. RSA500/600シリーズ・スペクトラム・アナライザとオプションのトラッキング・ジェネレータ

ケーブルを鉄塔の上から下まで通したり、壁を貫通したり、床下に 敷設したりするのは面倒な作業です。ケーブル敷設時に傷が付いた り、伸びたり、押しつけられたり、つぶれたり、うまく配線できない ことは多々あり、最初の敷設業者が現場を去ったずっと後になって 問題が大きくなることがあります。他の問題としては、低損失同軸ケー ブルなどで最小曲げ半径を超えて曲げられたケーブルでは、電気性 能が著しく低下することがあります。

幸いなことに、ケーブルとアンテナのテスト/トラブルシュートで特 殊なツールを使う必要はありません。ポータブル・タイプのスペク トラム・アナライザは、すでに無線伝送システムの設置/メンテナン スで使用されています。さらに無線伝送システムのさまざまな場面 でのテストでも使用されており、一般的な性能評価から個々のコン ポーネントの解析まで幅広く使われています。したがって、スペクト ラム・アナライザにトラッキング・ジェネレータを追加することは、 問題解決のためのコスト効率の良いソリューションとなります。

トラッキング・ジェネレータの基礎

スペクトラム・アナライザは信号を受信して測定するものであり、受 動機器と考えられます。スペクトラム・アナライザは、それ単体では、 既知の信号を特定のデバイスまたはネットワークに入力してその出 力または応答を測定するような、ケーブルやアンテナの測定はでき ません。

このような信号入力に対する応答の測定では、主に2種類のテスト機 器が使用されます。従来からあるテスト機器としては、RFアナライ ザまたはスカラ・ネットワーク・アナライザがあります。もう一つが、トラッキング・ジェネレータ内蔵のスペクトラム・アナライザです。 一般に、非常に高い確度が求められる場合はベクトル・ネットワーク・ アナライザが必要になりますが、他のほとんどの場合では、スペク トラム・アナライザとトラッキング・ジェネレータの組合せが最適で す。低価格で高性能なUSBベースのスペクトラム・アナライザの登場 により、ますます魅力的なソリューションとなっています。

トラッキング・ジェネレータは、正弦波出力をスペクトラム・アナラ イザの入力に提供することで動作します。トラッキング・ジェネレー タのスイープをスペクトラム・アナライザにリンクすることで、トラッ キング・ジェネレータの出力はスペクトラム・アナライザと同じ周波 数になり、それぞれは同じ周波数をトラッキングします。図1に示す ように、リターン・ロス・ブリッジが組み込まれており、出力された 信号の反射がスペクトラム・アナライザによって検出可能になります。

ノーマライズを実施するときには、トラッキング・ジェネレータの出 力をスペクトラム・アナライザの入力に接続します。ノーマライズ 後は、リファレンス接続の損失が補正されたレベルが一本のフラッ トな直線として得られます。測定時には、トラッキング・ジェネレー タの出力とスペクトラム・アナライザの入力の間に測定対象のデバ イスを入れます。被測定デバイスの応答によって信号が変化し、こ の変化はスペクトラム・アナライザによって測定されます。

ノーマライズ、校正、測定

スペクトラム・アナライザ内のトラッキング・ジェネレータは、振幅 のみのスカラ・パラメータと振幅と位相を含んだベクトル・パラメー タのいずれかを測定します。ゲイン測定では、RSA500シリーズ、 RSA600シリーズは振幅のノーマライズを実施することで、周波数対 振幅の正規化表示を作成します。しかし、リターン・ロス、VSWR、ケー ブル損失、障害位置検出などの測定では、ベクトル校正が必要にな ります。RSA500シリーズ、RSA600シリーズは工場出荷時にベクトル 校正が実施されているので、多くのトラブルシュート・アプリケー ションですぐに測定を始めることができ、厳密な測定をする場合は OSL(Open, Short, Load)法でユーザ校正することで優れた測定確度 が得られます。校正手法に関する詳細は、SignalVu-PCのユーザ・ヘ ルプ・ファイルで確認できます。このアプリケーション・ノートで説 明するすべてのベクトル測定は、計測器に標準搭載されている工場 校正を使用しています。

リターン・ロスとVSWR

ケーブル、アンテナの測定の中心になるのが、リターン・ロスと VSWRの測定です。これを測定することで、システムが期待通りに機 能していることを確認できます。このテストで問題が発生する場合 は、システム全体の性能が影響を受けている可能性があります。こ の測定は、ケーブル、アンテナ、コネクタ間のインピーダンスのミ スマッチによって信号の一部が反射するという原理を利用していま す。入力信号と反射信号が干渉して現れる定在波の電圧比を、電圧 定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)と呼びます。この 比はdBでも測定でき、リターン・ロスとして表わされます。

リターン・ロスとVSWRは大きな問題になることがあります。例えば、マッチングのとれていないアンテナはRFエネルギーを大きく反射させてしまい、送信した信号がアンテナから放射されずに送信機に戻ってきます。このように大きなエネルギーが送信機に戻ってくると、信号は歪み、送信されるパワーの効率に影響し、カバレッジ・エリアが減少することになります。

リターン・ロスとVSWRは、表現方法は違いますが同じ情報を表しています。以下の式を使うと、VSWRをリターン・ロスに変換できます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS

リターン・ロスは、反射電力と入射電力の比をdBで表わしたものです。 リターン・ロスはログ表示であるため、小さな値と大きな値をログ・ スケール上で容易に比較できます。テクトロニクスのUSBスペクトラ ム・アナライザのデフォルトのリターン・ロスのスケールは+10~- 40dBであり、ほとんどの測定ではこの範囲に入ります。参考までに、 20dBのリターン・ロス測定結果は、入射電力の1%のみが反射し、 99%のパワーは伝送されるため、非常に効率的であると言えます。 リターン・ロスが10dBの場合は、入射電力の10%は反射します。許 容可能なリターン・ロスのリミットはシステムによって異なりますが、 ケーブルとアンテナで構成されるシステムにおいては、15dB以下が 一般的なシステム・リミットになります。

リターン・ロスに対し、VSWRはシステムのインピーダンス・マッチ をリニア・スケールで表示したものであり、電圧の山と谷の比を測 定します。マッチングが完全でない場合は、反射信号は送信信号と 干渉します。この値が大きいとマッチングが悪いことを示します。完 全または理想的なVSWRのマッチングは1:1です。ケーブルとアンテ ナのシステムのより現実的なマッチングは、1.43(リターン・ロス換 算で15dB)程度です。アンテナの製造メーカは、一般的に特定の動 作周波数と特性インピーダンスをもとにVSWRでマッチングを規定し ます。大きなVSWRはインピーダンスのミスマッチの程度が大きいこ とを示し、送信が効率的に伝送されていないものとして観測できま す。テクトロニクスのUSBスペクトラム・アナライザにおける、 VSWRのデフォルトのスケールは1~10です。

テクトロニクスのRSA500シリーズ、RSA600シリーズ・スペクトラム・ アナライザにオプションのトラッキング・ジェネレータを装備すると、 リターン・ロスとVSWRが測定できます。図2は、700MHz~2.6GHzを 掃引したバンドパス・フィルタのリターン・ロスが測定されています。 1.458GHz(-53.8dBのリターン・ロス)と1.67GHz(-13.04dBのリ ターン・ロス)にマーカが付いており、フィルタの通過帯域内におけ る最高/最低のマッチングを示しています。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図2. バンドパス・フィルタのリターン・ロス対周波数

一方、図3では同じバンドパス・フィルタのVSWRを測定しています。ここでも1.458GHz(1.00のVSWR)と1.67GHz(1.57のVSWR)にマーカが付いており、フィルタのバンドパスにおける最高/最低のマッチングが示されています。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図3. バンドパス・フィルタのVSWR対周波数

予想通り、VSWRの測定結果はリターン・ロスの測定結果と一致しています。

ケーブル損失

信号がケーブルとコンポーネントを伝送すると、エネルギーは失われます。でも、どのくらい失われるのでしょうか。伝送ラインにおける挿入損失またはケーブルによる減衰はRFシステムの総合的な性能に影響を及ぼすため、VSWR測定で考慮する必要があります。極端な場合、ケーブル損失によってアンテナの性能低下や不良を判別できなくなります。

ケーブル損失の測定は一般に、同軸ケーブル、ジャンパ・ケーブル、コネクタを含む、伝送ケーブル・システムのトータルの挿入損失を観測します。コンバイナまたはフィルタなどのコンポーネントも影響し ま す。テ スト 前 に は、ア ン テ ナ ま た はTMA(Tower Mounted Amplifiers、タワー・マウント・アンプ)は外します。

RSA500シリーズ、RSA600シリーズとオプションのトラッキング・ジェネレータによるケーブル損失測定は、リターン・ロス測定と似ています。この場合、ケーブルの遠端で短絡して信号を反射させ、掃引周波数範囲内でエネルギー損失を計算します。図4は、700MHz~2.6GHzのケーブル損失または挿入損失を表示した例です。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図4. 15mのRG-58/U同軸ケーブルのケーブル損失(挿入損失)対周波数の例(マスク適用)

平 均 ケーブ ル 損 失 は8.64dB、傾 きは3.055dB/GHzで あることが、SignalVu-PCで容易に確認できます。

ケーブルは、周波数によって挿入損失が異なります。この例では、挿入損失は776MHzでは5.58dBですが、2.57GHzでは11.47dBとなっています。周波数が高くなるか、ケーブル長が長くなると、ケーブル損失は増えます。

ケーブル損失の測定は、性能低下の予兆を発見するための便利なツー ルです。伝送ラインが経年変化すると、損失も増加する傾向にあり ます。以前の測定結果と比較することで、時間経過による損失の変 化を見つけることができます。SignalVu-PCは波形を保存でき、マス クを適用することで以前のデータと簡単に比較表示できます。図4で は、ケーブルの仕様をもとにマスク(黄色の領域)が適用されていま す。ケーブル損失測定がマスク内に入るようなことがあれば、違反 であることがわかるので、問題対処の手続きがとれます。

障害検出

リターン・ロスまたはVSWRおよびケーブル損失が仕様を外れていることがわかったならば、次の手順は伝送システム内における障害の位置を特定します。それがDTF(Distance to Fault、障害位置)測定であり、システムをトラブルシュートして障害または不連続点をピンポイントで特定します。

DTF測定は、リターン・ロス測定と同じ情報をもとにしています。スペクトラム・アナライザは周波数ドメインでケーブルをスイープし、逆FFTでデータを時間ドメインに変換します。

ケーブルで使用されている誘電材料によって伝搬速度が変化するため、ケーブルを伝わる信号の速度に影響します。伝搬速度(VP)の値の確度は、不連続の位置のDTF測定の確度に影響します。VP値の±5%誤差は、距離の確度に同等の影響を与えます。一般に、VPの値は製造メーカの発行するデータ・シートで調べることができます。しかし、アダプタやジャンパなど、システム内のすべてのコンポーネントを考慮に入れた場合、常にいくらかの変動があることを考慮する必要があります。

DTFのより有効なアプリケーションが、時間経過によるシステムの変 化をモニタするトラブルシュート・ツールです。例えば、コネクタの 性能が年月を経過するのとともに大きく低下していることを検出す ることができます。この場合は相対的な変化が重要であり、絶対値 はそれほど重要ではありません。このように使用すれば、DTFはケー ブル、アンテナのシステムをトラブルシュートするための有効な方 法となります。

DTF測定では、アプリケーションに合った正しい周波数レンジを選択することが重要です。リターン・ロス測定では通常、周波数レンジは被測定デバイスで決まります。しかし、DTF解析では分解能と最大距離レンジは、以下の3つのパラメータで決まります。

  • 周波数のスイープ・レンジ
  • データ・ポイントの数
  • テストするケーブルの相対伝搬速度

DTFモードでアンテナのリターン・ロスを調べる場合、アンテナの動作周波数範囲で測定するべきです。しかし、ケーブルのDTF解析では、周波数範囲は最大距離と測定の分解能に大きく依存します。

伝送路の障害または性能低下を調べる場合、広い周波数スパンを使 用して高い距離分解能を得るのが一般的です。しかし、周波数範囲 は最大距離によって制約を受けます。もっと正確に言えば、最大距 離は周波数範囲に反比例します。したがって、周波数範囲が広くな ると、測定できる最大距離は短くなります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS

最大距離が決まっている場合、データ・ポイント数(N)と周波数帯域(BW)の値は指定された最大距離を満足するような組み合わせにします。

また、周波数範囲とDTF測定の距離分解能にも関係があり、周波数範囲が広くなると分解能は上がります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS

周波数帯域が広くなると、距離分解能が上がります。分解能が上がることは優れた測定確度につながるため、DTF測定では一般的に良い結果につながります。

BWが決まっている場合、データ・ポイント数(N)と周波数分解能(Δf)の組み合わせはBWより小さい値になるようにします。

DTF測定の実行

ここまでDTF測定の原理について説明してきました。ここからは、 SignalVu-PCと、トラッキング・ジェネレータのオプションを装備し たRSA500シリーズまたはRSA600シリーズを使用した、セットアップ を含めた実際の測定手順を説明します。SignalVu-PCでは、DTFセッ トアップ・ボタンはRL/DTF設定タブの下にあり、距離または周波数 範囲を指定した測定が実行できます。

1. SignalVu-PCで、Setup → Displaysと選択します。

2. MeasurementsパネルでReturn Lossを選択します。

3. Available表示パネルでRL/DTFアイコンをダブル・クリックして表示を選択し、OKをクリックします。

4. 2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALSをクリックしてRL/DTF Settings制御パネルを開きます。

5. Displayタブをクリックし、Show DisplaysパネルでDisplay 2を選択し、DTF/Return Loss表示のみになるようにします。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図5. SignalVu-PCでのDTF設定

6. ParametersタブでOutput Power LevelとDTF Window表示を設定します。Traces、Scale、Prefsのタブで波形、表示を設定します。

7. Cable Typeタブを選択し、ケーブルの種類を指定します。ケーブ ルの種類がリストにない場合は、New Cableボタンをクリックし てケーブルを追加します。New Cableパネルが表示されますので、 ケーブル名、伝搬速度係数、ケーブル・ロスを追加します(図6を 参照)。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図6. ケーブルの種類の選択または新しいケーブルの設定の例

8. DTF SetupボタンをクリックしてDTF Setupウィンドウを開きます。ここで、測定を距離と周波数帯域のどちらで制限するかを指定します。

9. 図7のように、Cover Distanceを設定します。DUT(アンテナなど) までのケーブル長または距離を設定します。アンテナまたはケー ブルをテストする場合など、アナライザとDUT間の信号経路に周 波数を制限するデバイスがない場合にこの設定は推奨されます。 しかし、障害点の位置を正確に測定するために、カバー距離を短 く設定することができます(例えば、ケーブル長が100mで障害点 が30m地点の一ヶ所だけの場合、35mにすることができます)。 距離を短くすることで、そのポイント数における距離分解能が上 がります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図7. カバー距離の設定

10. 距離でなく、システムの周波数帯域を条件にする場合は、図8に示すようにLimit Bandwidthを選択します。それ以外の場合は、手順11に進みます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図8. 周波数帯域制限の選択

  アナライザとDUT間の信号経路に、フィルタなどの周波数を制限するデバイスがある場合に、この設定が推奨されます。

11. 必 要 に 応じ、DTF SetupウィンドウのParametersの 欄 でCenter Freqを変更します。中心周波数の値は、補助として使用されます。中心周波数は、システムまたはDUTによって異なります。

12. Methodを、Fast、Normal、Long Distance(Limit Bandwidthが選 択されている場合)、またはHigh Resolution(Cover Distanceが選 択されている場合)を選択します。この選択によって、周波数ス イープのポイント数が決まります。Fastではポイント数は最も少 なく、Long DistanceとHigh Resolutionではポイント数は最も多く なります。Limit Bandwidthを選択した場合、周波数帯域が制限さ れているのでポイント数を増やすと周波数ステップが小さくなり、 それにより距離レンジが伸びます。

13. Resultsの欄で結果をチェックします。DTF測定による周波数スイープのパラメータと距離が表示されます。

14. OKをクリックすると、設定が完了してDTF Setupウィンドウは閉じます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図9. DTF測定セットアップの代表的な例

中継コネクタと遠端がオープンの延長ケーブルを含んだケーブルの 代表的なDTF測定のセットアップを図9に示します。図10に、リターン・ ロス対距離の測定例を示します。この表示から、伝送ラインに沿っ た不連続点において振幅のスパイクが確認できます。MRのマークの 付いた16.602m地点は中継コネクタであり、M1のマークの付いた 17.677m地点はケーブル・エンドです。この例では、ケーブルはオー プンエンドであるため、パワーの大部分はケーブル端で反射されま す。M1より後の振幅ピークは、2つのケーブルによる複数の反射を 示しています。M1より後ろの最初のスパイクは、オープンになって いるケーブル・エンドで反射した信号が中継コネクタで反射してさ らにもう1度ケーブル・エンドで反射した信号によるものです。

伝送システムの障害特定では、リターン・ロスの他にVSWRも使用さ れます。図11は、同じケーブル・システムによるVSWR対距離の測定 例です。ここでは、すべての不連続がVSWRの1以上の振幅として表 示されます。SignalVu-PCは、DTF測定においてリターン・ロスと VSWRの両方が表示できるため、障害の表示/特定の強力なツールと なります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図10. リターン・ロス対距離
2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図11. VSWR対距離

混在するアンテナのテスト

図12に示す携帯電話の基地局など、多くの無線アプリケーションで は、電波塔、その他の構造物に異なったシステムが混在します。こ のような状況では、それが同じシステムの一部であるか、そうでな いかに関わらず、アンテナの配置に十分に注意する必要があります。 送信側での相互変調の発生や、受信側での感度低下を避けるために も、適切なレベルのアンテナ間アイソレーションを維持することが重 要になります。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図12. 混在するアンテナ・システムを持った携帯基地局の例

相互変調と受信感度低下は、ハイパワーの送信機のアンテナから出 力されたエネルギーが、近くのアンテナに結合し、結合されたシス テムの増幅器に入ることによって発生することがあります。デュプレ クサやフィルタが内蔵されたシステムは、近くの送信機や他の干渉 による信号を除去することもできますが、このような対策があっても アンテナ間では60dB以上のアイソレーションが必要になります。

RSA500シリーズまたはRSA600シリーズ・スペクトラム・アナライザ とオプションのトラッキング・ジェネレータを使用することで、この ような解析が可能になります。テスト・セットアップを図13に示しま す。トラッキング・ジェネレータのポートに送信アンテナを、スペク トラム・アナライザのRFポートに受信アンテナを接続します。システ ムの最も低い送信周波数から、最も高い受信周波数までスイープし ます。この測定からアイソレーション対周波数のプロットが得られ、 2つのアンテナ間のさまざま周波数におけるアイソレーション・レベ ルが表示されます。

2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図13. 混在するアンテナ間アイソレーションのテスト・セットアップ
2001 SPECIFIED CALIBRATION INTERVALS
図14. アイソレーション対周波数の測定例

SignalVu-PCのトランスミッション・ゲイン表示によるISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドの測定例を、図14に示します。互いに 60°ずらして配置した2本のアンテナから、2.4GHz~2.5GHzを送信し たときのアイソレーションを示しています。この測定のために、まず アンテナを接続する2本のケーブルをスルー・コネクタで接続した状 態でトラッキング・ジェネレータをノーマライズします。ケーブルお よびコネクタの損失が補正された後でアンテナを接続します。表示 される最大値、最小値から、-57.4dB~-83.03dBのアイソレーション となっています。波形は保存でき、波形データはエクスポートして 外付けプログラムで使用できます。マスクをかけることで、以前の データと簡単に比較表示できます。

テクトロニクスのRSA500シリーズ、RSA600シリーズ

RSA500シリーズは、リアルタイムなスペクトラム解析により、発見 が難しい妨害電波の検出、RFネットワークの維持、これらの作業記 録に携わるスペクトラム管理者、妨害電波対策エンジニア、ネット ワーク管理者の問題を解決します。RSA500シリーズは、堅牢でコン パクトなパッケージであり、バッテリ駆動も可能です。RSA600シリー ズは同じ機能を持っていますが、商用電源仕様となっており、ラボ 環境に適しています。両シリーズとも、小型・軽量でトラッキング・ジェ ネレータ機能が装備可能な高性能スペクトラム・アナライザです。

両方のシステムのコアとなっているのが、優れた忠実度で40MHz帯 域幅を取込む、USBベースのRFスペクトラム・アナライザです。 70dBのダイナミック・レンジと7.5GHzの周波数帯域により、目的の 信号を優れた確度で測定できます。USBで接続する機器であるため、 軽量のWindowsタブレットまたはノートPCとともに使用します。

RSA500シリーズ、RSA600シリーズは、テクトロニクスの従来のスペ クトラム・アナライザのプラットフォームとして使用されている強力 なソフトウェアであるSignalVu-PCとともに動作します。DPXスペク トラム/スペクトログラムのリアルタイム処理はPCで実行されるた め、ハードウェアのコストが抑えられています。

リターン・ロス・ブリッジが内蔵されているため(図1を参照)、オプ ションのトラッキング・ジェネレータを搭載することで、フィルタ、 デュプレクサ、その他のネットワーク・エレメントのゲイン/ロスだ けでなく、ケーブル/アンテナのVSWR測定、リターン・ロス、DTF、 ケーブル損失をすばやくテストできます。数多くの校正キットも用意 されているため、より正確な測定が可能になります。

まとめ

無線通信システムにおいては、アンテナだけでなく、送信機、受信機、 アンテナ間を接続するケーブル・システムも含めて最良の状態であ ることが必要であり、そうでないとシステム性能に問題が発生しま す。リターン・ロスやVSWRなどのライン・スイープ測定は、RF、マ イクロ波伝送システム、アンテナの検証、電気性能の検証に威力を 発揮します。問題が発見されたならば、DTF測定により障害の位置を 簡単に特定できます。テクトロニクスのRSA500シリーズ、RSA600シ リーズUSBスペクトラム・アナライザとオプションのトラッキング・ ジェネレータを使用することで、このような測定がすばやく、効率良 く、効果的に行えます。