拡張パワー測定/解析
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5シリーズMSOの拡張パワー測定/解析機能があれば、パワー・システムをより詳細に解析できます。高性能オシロスコープと優れた解析ソフトウェア、さらに数多くの電圧/電流プローブを組み合わせることで、誰にでも簡単にパワー・システムの正確な自動測定が行えます。5シリーズMSOには、12ビットA/Dコンバータが搭載されており、高精度の測定データを利用できます。さらに、ピンチ/スワイプ/ズームに対応したタッチ・インタフェースを活用しながら、効率的に測定を進められます。各種のグラフィカル・パワー解析ツールに加え、最大8つのFlexChannel™入力と15.6型HDディスプレイを装備し、パワー・システムを詳細に観測できます。最先端のIsoVuTM光アイソレーション型差動プローブをはじめとする、さまざまな電圧/電流プローブが用意されています。同相除去性能に優れたIsoVuプローブと拡張パワー測定/解析ソフトウェアの自動測定機能を組み合わせることで、最新のGaN/SiC設計の最適化にも対応できます。
主要な測定
- 電源測定
- 電力測定:有効電力、皮相電力、力率、位相角
- 全高調波歪みとクレスト・ファクタ(波高率)
- 高調波測定、バー・チャート、リスト表示
- 振幅:最小値、最大値、振幅、p-pなど、サイクルあたりの電圧または電流を容易に測定可能
- スイッチング・デバイスの測定
- スイッチング損失測定:スイッチング・デバイスのターンオン、ターンオフ、伝導損失の計算
- 安全動作領域(SOA):カスタマイズ可能な安全動作領域のマスク・テスト
- タイミング解析:パルス幅、デューティ・サイクル、周波数または周期のサイクルごとのプロットまたはヒストグラムにより、パルス幅変調スイッチング信号の解析が容易に
- RDS(on):オン状態のスイッチング・デバイスの動的抵抗
- 磁気解析/測定
- インダクタンス:コアのインダクタンス
- 磁気特性:インダクタのB-H曲線の測定/プロット
- 磁気損失:全磁気損失の計算
- I対∫V:Iおよび∫Vの波形プロットの表示
- 出力測定
- 電源リップル
- スイッチング・リップル
- 効率:電源回路の効率(測定された出力電力を測定された入力電力で除算)
主な特長
5シリーズMSOのピンチ/スワイプ/ズーム機能を使用して、自動測定機能の追加/設定/削除が可能
テスト・レポートの自動生成機能により、測定項目、テスト結果、およびプロットを編集可能な一つのMHTファイルまたはPDFファイルとして出力できるため、テスト結果のレポートが容易
最先端のIsoVu光アイソレーション型など、さまざまな電圧/電流プローブが用意されており、広範なアプリケーションに対応可能
測定の設定、測定結果の転送など、リモート・インタフェースによるテスト・アプリケーションの自動化が可能
入力解析
電源品質と電流高調波の測定は、電源ユニットが電源ラインに与える影響を解析し、さまざまなライン条件の下での電源性能を評価するために、電源ユニットの入力部に対して行われる一般的な測定です。
電源品質
この測定は電源周波数に最適化されており、一般的に電源回路のACライン入力で実行されます。入力部の消費電力や歪みのレベルをすばやく解析できます。
測定項目:
実効電圧と実効電流
周波数
有効/皮相/無効電力
力率
THDとクレスト・ファクタ(波高率)

電源品質測定では、さまざまなフォーマットで情報が提供される。数値形式(右上)、表形式(上)、瞬時電力波形とエネルギーのプロット(下)
高調波
入力側にリアクタなどの非線形デバイスが使用された電源は、AC側から見れば非線形負荷となります。過大な高調波エネルギーは、軽減策を講じなければ電源ライン上の他の機器の動作に影響を与え、送電コストが上がることがあります。その結果、ライン電源で動作するデバイスによって高調波が発生し、規格に適合できなくなる可能性があります。
拡張パワー測定/解析ソフトウェアは、IEC61000-3-2、AM 14、MIL- STD-1399規格に対応したリミット・テストが可能なため、本番のコンプライアンス・テストに臨む前に、プリコンプライアンス・テストを十分に実施できます。最大100次の高調波をグラフ、表形式で表示できるため、リストをトラバースしながら個々の高調波を詳細に解析できます。

高調波のバー・グラフ、高調波の測定結果表、結果バー(右上)を使用したトラバース機能
スイッチング・コンポーネントの解析
電力変換効率と信頼性に対する要求の高まりにより、電源のエネルギー損失の正確な計算と評価の重要性が増してきました。
スイッチング損失測定
エネルギー損失は、電源のほとんどすべてのコンポーネントで発生しますが、スイッチング・モード電源(SMPS)におけるエネルギー損失の大部分は、スイッチング・トランジスタがターンオフ(Toff)からターンオン(Ton)の状態に移行するとき(ターンオン損失)、またはその逆(ターンオフ損失)のときに生じます。5-PWRでは、スイッチング・デバイス両端の電圧降下とそこを流れる電流を測定することで、各サイクルのスイッチング損失測定パラメータを自動的に計算します。
つい最近まで、ハーブブリッジ回路のスイッチング・ステージのハイサイド側でスイッチング測定を行うのは、ほとんど不可能とされてきました。ハイサイドVDSや電流シャントの両端の電圧など、スイッチング・ノード基準に対して測定を行う場合は、差動信号に大きなコモンモード電圧信号が発生することで歪みが生じるという難題に直面していました。この問題は、スイッチング周波数が高いGaN/SiCトランジスタなどのワイド・バンドギャップ・デバイスで特に顕著であり、設計の見直しが急務となっています。
5シリーズMSOはIsoVu光絶縁プローブに対応しており、高いコモンモード信号が存在する状況でも、正確なスイッチング測定が可能です。
スイッチング損失測定によるFETの電力損失の評価。波形は測定領域(Ton、Toff、および全サイクル)を表すマーカで色分けされており、対応する測定値が結果バッジに表示されている。結果バッジのコントロールでサイクル間を簡単に移動できる
特別な設定によるスイッチング損失測定により、アクティブ力率補正、フライバック・コンバータにおいて、安定し、再現性のある測定が行えます。
取り込まれたすべてのサイクルのスイッチング損失の全体像を把握したい場合には、軌跡プロットを使用します。軌跡プロットでは、ターンオン/ターンオフ時におけるスイッチ両端の電圧とそこを流れる電流の対比が自動的にプロットされるため、すべてのスイッチング・サイクルのスイッチング損失のレンジを一目で把握できます。
スイッチング損失測定の軌跡プロットにより、すべてのスイッチング・サイクルのTon損失とToff損失を1つのプロットで観測できる
安全動作領域
安全動作領域(SOA)プロットは、スイッチング・デバイスに最大仕様を超えるストレスがかからないことの確認、デバイス評価のためのグラフィカルな手法です。SOAテストは、負荷変動、温度変化、入力電圧変動を含む、動作条件の全範囲にわたる性能を検証します。SOAプロットにマスク・テストを併用して、検証を自動化することもできます。
安全動作領域(SOA)プロットとマスクを使用することで、動作条件が変化しても、スイッチング・デバイスがSOAのエンベロープの範囲内で動作することを確認できる
RDS(on)
この測定項目は、スイッチング・デバイスのスイッチング時の挙動の特性評価を行うもので、オン状態で電流が流れているときの抵抗測定します。動的オン抵抗は、スイッチがオンに切り替わりデバイスに電流が流れるときに、デバイス全体に残る電圧の割合で表されます。
RDS(on) 測定
磁気解析
サポートされている測定項目:
- インダクタンス
- BH曲線を含む磁気特性
- 磁気損失
- I対ʃV
すべての電源システムで磁気コンポーネントは重要な要素です。インダクタとトランスは、エネルギーの保存デバイスとして、スイッチング電源とリニア電源で使用されます。インダクタを出力フィルタに使用する電源もあります。システムで重要な役割を持つ磁気コンポーネントの特性を評価し、その安定性と電源全体の効率を知ることは欠かせません。
インダクタンス
インダクタは、周波数の増加と共にインピーダンスが増大し、低い周波数よりも高い周波数の妨げとなります。この性質をインダクタンスと呼び、ヘンリーという単位で測定します。拡張パワー測定/解析ソフトウェアでは、インダクタが自動的に測定されます。
磁気損失
磁気部品による電力損失の解析は、スイッチング電源の効率、信頼性および性能を評価する上で欠かせません。以下の図のように、拡張パワー測定/解析ソフトウェアでは、磁気部品による全電力損失が測定されます。
B-Hプロット
磁性材料の特性は磁束密度(B)、磁界強度(H)、および材料の透磁率(μ)で表されます。スイッチング電源でのB-Hプロットは、しばしば磁性素子の飽和(または不飽和)を確認するために使用され、コア材の単位量当たり、サイクルごとのエネルギー損失の指標を与えるものです。拡張パワー測定/解析ソフトウェアは、磁気部品の両端の電圧および磁気部品に流れる電流を測り、以下の図に示すようなB対H曲線をプロットします。変圧器の複数の二次巻線を同時にテストできるため、検証/試験回数が少なくなり、短期間での製品化につながります。
I対∫Vプロット
I対∫Vプロットを仕様することで、BおよびHの値(電圧および電流に比例)を解析できます。以下の図のように、電圧波形の積分と電流波形がXYプロットの形式で表示されます。
磁気解析/測定(B-H曲線、I対ʃV、インダクタンスのプロット)
出力解析
DC電源の最終目標は、入力電力を1つまたはそれ以上の直流出力電圧に変換することです。スイッチング電源で重要な出力測定項目は、電源リップルとスイッチング・リップルです。
電源/スイッチング・リップル
電源のDC出力は、クリーンな品質でACノイズ/リップルが最小であることが求められます。拡張パワー測定/解析ソフトウェアは、リップルを測定できるため、根本原因の特定に役立ちます。電源リップルの測定では、入力のライン周波数に関連するAC出力信号の量を測定します(入力が整流されるため、電源リップルは通常ACラインの周波数の2倍になります)。スイッチング・リップルの測定では、スイッチング周波数に関連するAC出力信号の量を測定します。

リップル解析は、低周波の電源リップルと高周波のスイッチング・ノイズを区別するのに役立つ
効率
今日の競走の激しい市場において、デバイスまたは製品の効率は重要な差別化要因になります。拡張パワー測定/解析ソフトウェアを使用することにより、製品の電力変換効率(AC-DC、AC-AC、DC-DC、DC-AC)を簡単に測定できます。今日、複数の出力を持つパワー・デバイスも珍しくありませんが、拡張パワー測定/解析ソフトウェアを使用すれば、そうした製品のパワーも一度にテストすることができます。テスト/検証の時間が短縮されるため、迅速な市場展開が可能になります。
効率測定
効率測定のコンフィグレーションが可能なため、複数出力が可能な最新の電力変換デバイス(AC-DC、AC-AC、DC-DC、DC-AC)のテストが可能
正確な測定結果を実現する高性能プローブ
電源システム測定の確度をあげるには、ノイズの除去とプロービング誤差の解消が重要です。5シリーズMSOと拡張パワー測定/解析ソフトウェアは、さまざまなプローブをサポートしており、さまざまなニーズに柔軟に対応できるだけでなく、プロービングの問題を解決するのに役立つ優れた機能も備えています。
このシステムでは、プローブとオシロスコープ間の通信機能に対応するTekVPIインタフェースを装備した電圧プローブ、電流プローブを使用します。このインタフェースを使用すると、プローブのスケール設定がオシロスコープに自動的に読み込まれます。プローブによっては、オシロスコープの前面パネルからレンジをコントロールすることもできます。また、電流プローブが閉じていない、電流プローブの消磁など、エラー/警告などの状態が通知されます。
スイッチング損失など、タイミングが重要な測定においても、解析ソフトウェアは電圧/電流プローブに問い合わせることができるため、遅延の公称値を使用することでタイミング・スキューをとることができ、電圧/電流波形を同期させることで確度と再現性に優れた測定結果が得られます。
このシステムは、IsoVu絶縁測定システムにも対応しています。この差動プロービング・システムは完全な光絶縁が可能で、最高1GHzの周波数帯域と優れた同相除去性能を備えているため、電源システムのVGS、VDS、またはVSHUNT測定に最適です。IsoVuプローブは、GaN/SiCトランジスタなどのワイド・バンドギャップ・スイッチング・デバイスを使用したデザインの最適化にも優れた性能を発揮します。
テスト・レポートの自動作成
設計/開発プロセスで、データ収集、保存、レポート作成という作業には時間がかかりますが、これはきわめて重要な作業です。5-PWR解析ソフトウェアはテスト・レポートの自動生成機能を備えており、テスト結果の共有や記録が行えます。ボタンを押すだけで、アクティブな測定項目が網羅されたレポートを生成できます。プロットやテスト項目を追加するなど、さまざまなカスタマイズが可能です。編集可能な.mhtファイルのほか、.pdfファイルも生成できます。以下はレポートの出力例です。
仕様
- 入力解析
- 有効電力、皮相電力、力率、無効電力、波高率、位相角、THD、高調波、EN61000-3-2、EN61000-3-2 AM14、およびMIL-STD-1399(400Hz)規格に対するプリコンプライアンス・テスト
- 振幅測定
- サイクル振幅、サイクル・トップ、サイクル・ベース、サイクル最小値、サイクル最大値、サイクル・ピーク
- タイミング解析
- パルス幅、デューティ・サイクル、周期、周波数変動対時間
- スイッチング解析
- スイッチング損失、ターンオン(Ton)、ターンオフ(Toff)、伝導損失(cond)、安全動作領域(SOA)、SOAのマスク・テスト、di/dt、dv/dt、RDS(on)
- 磁気解析
- インダクタンス、磁気特性、磁気損失、I対∫V
- 出力解析
- リップル(電源周波数、スイッチング周波数)と効率
- プロット
- 時間トレンド、軌跡プロット、ヒストグラム、バー・グラフ、B-H曲線、インダクタンス・プロット、I対∫Vプロット
- レポート
- MHTおよびPDFフォーマット、CSVフォーマットによるデータのエクスポートが可能
- 消磁/デスキュー(静的)
- プローブの自動検出とオートゼロ機能。各チャンネルのメニューからプローブのデスキューが可能
- 測定ソース
- ライブ信号(アナログ)、リファレンス波形、演算波形
ご注文の際は以下の型名をご使用ください。
型名
製品形態 | Opt. | サポートされる機器 |
---|---|---|
新規に機器購入時のオプション型名 | 5-PWR、5-PS2 | 5シリーズMSOオシロスコープ(MSO54型、MSO56型、MSO58型、MSO58LP型) |
製品アップグレード時の型名 | SUP5-PWR | |
フローティング・ライセンス | SUP5-PWR-FL | 5シリーズMSOオシロスコープ(MSO54型、MSO56型、MSO58型、MSO58LP型) フローティング・ライセンスは任意の5シリーズ・オシロスコープ間での移転が可能ですが、同時に使用できる機器は1台のみです。 |
パワー解析に関するその他の情報は、当社ウェブ・サイト(http://www.tek.com/application/power-supply-measurement-and-analysis)を参照してください。
推奨プローブおよびアクセサリ
アクセサリの種類 | 推奨機種 |
---|---|
AC/DC電流プローブ | TCP0020、TCP0030A、TCP0150 |
AC電流プローブ | TRCP0300、TRCP0600、TRCP3000 |
中電圧差動プローブ | TDP0500、TDP1000 |
高電圧差動プローブ | THDP0200、THDP0100、TMDP0200 |
IsoVu光絶縁差動プローブ | TIVM1/L、TIVH08/L、TIVH05/L、TIVH02/L |
高電圧受動プローブ | P5100A、P6015A |
デスキュー・パルス・ジェネレータ | TEK-DPG |
パワー・ソリューション・バンドル | 5-PS2 |
デスキュー・フィクスチャ | 067-1686-xx |
パワー・ソリューション・バンドル
5シリーズMSOのPSバンドル・オプション型名 | 概要 |
---|---|
5-PS2 | 5-PWR、TCP0030A型、THDP0200型、067-1686-xx(デスキュー・フィクスチャ) |
豊富な電源用プローブ・ラインアップ
Opt. 5-PWRによるパワー測定では、以下のプローブを使用することで5シリーズMSOオシロスコープのパワー測定機能を最大に生かせるソリューションを構築できます。
プローブの種類 | 概要 | |
---|---|---|
高電圧差動プローブ | THDP0100/THDP0200/TMDP0200型高電圧差動プローブは、グランド基準のない測定、フローティング測定に最適です。これらのプローブは、200MHzまでの周波数帯域と最大6,000Vの電圧レンジをサポートしています。 | ![]() |
P5200A/P5202A/P5205A/P5210A型高電圧差動プローブは、グランド基準のない測定、フローティング測定または絶縁測定に最適です。これらのプローブは、100MHzまでの周波数帯域と最大5,600Vの電圧レンジをサポートしています。 | ![]() | |
光絶縁差動プローブ | TIVM1/TIVH08/TIVH05/TIVH02型光絶縁差動プローブは、高い周波数の差動信号を正確に測定できる機能を備えており、ワイド・バンドギャップ半導体のテストなどに最適です。長さが3mと10mのプローブが用意されています。 TIVM1型の周波数帯域は1GHzで、60kV未満のコモンモード電圧が存在していても、最大±50Vpkの差動信号を測定できます。TIVH08/TIVH05/TIVH02型の周波数帯域はそれぞれ800MHz、500MHz、200MHzで、60kV未満のコモンモード電圧が存在していても、最大±2,500Vpkの差動信号を測定できます。 | ![]() |
電流プローブ | テクトロニクスでは、最高120MHzの周波数帯域に対応し、1mAというクラス最高の優れた電流クランプ感度を備えたAC/DC電流プローブなど、さまざまな種類の電流プローブを提供しています。 | ![]() |
AC専用のロゴスキー・プローブとしては、TRCP300型(9Hz~30MHz、250mA~300Aピーク)、TRCP600型(12Hz~30MHz、500mA~600Aピーク)、TRCP3000型(1Hz~16MHz、500mA~3,000Aピーク)が用意されています。 | ![]() | |
中電圧差動プローブ | TDP0500/TDP1000型差動プローブは、グランド基準のない測定、フローティング測定または絶縁測定に最適です。これらのプローブは、1GHzまでの周波数帯域と最大±42V(DC+ピークAC)の電圧レンジをサポートしています。 | ![]() |
各オシロスコープに対応するプローブの完全なリストについては、http://www.tek.com/probesで各モデルのページをご覧ください。推奨するプローブの機種と必要なプローブ・アダプタの情報が記載されています。